ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

ガクアジサイ

病気をして散歩が難しいので、 些細な自宅の庭に鉢植えして置いているガクアジサイが毎日色付いてくるのを見ている。 「ガク」と呼ばれる装飾花は、紅く色づくだけでなく、だんだん大きくなって中央の細かい青や薄紫色の花 (交配可能) を覆い尽くす様になり、アジサイという花がどういう進化 (?) を遂げたのかを窺わせる。

写真の右端には菊のような葉が見えるが、隣ではミヤマヨメナも花をつけている。園芸のミヤコワスレの原種とされているが、六月に紫陽花と野菊のような花を同時に見るのは不思議な気もする。

春蘭

散歩していたら春蘭が咲いていた。 少し前まで雑木林に普通に自生して見られた春蘭は地味だがよく見ると気品のあるところが (過去の) 日本人の感性にあうのか昔から愛されており、自生しているものを掘って庭に植えたり、鉢植えにして楽しんだという記述も少し前のものを読んでいるとよく見かける。 明治天皇も行幸の折に自ら見つけた春蘭を杖で掘って持ち帰り鉢植えにさせたという記録が残っている。葉に麩が入ったり、花の色が変わっている個体変異は、明治期から昭和にかけて各地の里山で発見されて栽培、珍重され、「日本春蘭」として現在でも愛好している人がいる。

瞳をとじて

最近、映画健忘症にかかった感のある自分は遅まきながらこの映画を見て、まるで登場人物のフリオがしただろう体験をしたのだった。やはり映画館こそ失われた記憶を取り戻すのに一番適した環境なのかもしれない。 少なくともこの作品の登場人物たちはそのことを些かも疑っていないように振る舞っていることは感動的である。

この映画を見る前から前兆のように、『ミツバチのささやき』の最後でアナ・トレントが窓を開いて「私はアナ。私はアナ」と呟やいてあの印象的な瞳をとじると、それまでにない大人の女性のような表情を見せるところにまいったことを思いだした。瞳をとじること。ロベルト・ロッセリーニの『ドイツ零年』の少年は自分の見た現実に耐えられず、目を閉じ手で顔を覆ってビルから飛び降りてしまうことで大人になることを拒否したのだが、『ミツバチのささやき』のアナの場合はどうだったんだろう、そんな答えが出せないようなことを考えたことも思い出した。 ビクトル・エリセは視線劇で瞳をとじること (それは涙さえ見せることのない最も微妙な運動のひとつである) が映画を揺るがせることを発見した一人である。

まだ一度しか見ていないし、過去の三作の DVD も探し出して見返すこともしていないので、考えがまとまらない。だが、それは記憶喪失者にとって当然のことなのだから、そのままにしておこう。

『瞳をとじて』 ではそれにしてもなぜあんなに雨ばかり降っているのだろう。だからといって空は雨が降っているか曇天ばかりでもなく、asylum での特にあの忘れ難いペンキを塗るシーンでは青い空も登場している。 あの白い洗濯物が飜るところはドライヤーの『奇跡』 (映画の中でその作品名が口にされたりもしている) の冒頭を思い出させてもくれるし、ミュージカル的な演出だったからだろうか、奇妙なことに澤井信一郎の『野菊の墓』も思い出させてくれた (蓮實重彥が澤井信一郎とエリセは似ていると言っていたことを思い出したからかもしれない)。

エリセは記憶装置としての映画に「いま・ここ」の現在が距離なしに密着して張りついてしまう瞬間をことのほか大切にしていることはわかる。しかし、ディーン・マーチンの過去を取り戻そうとしている役柄がこの作品の元映画監督とどこかしら通じるところがあるといっても、『リオ・ブラボー』 を今の時代にこのように引用することが許されてよいのかという気もした。ことによったら、映画健忘症にはこれくらいやらないと効き目がないと思ったのかもしれないし、二曲やらないというのが節度だったのかもしれない。 実際、これは効いた。それは、ヴィスコンティの『ベリッシマ』に出演しているアンナ・マニャーニが、夏の夜、アパートの中庭でホークスの『赤い河』の野外上映を見ながら傍らに座っている夫に話しかけているシーンのように効いたといってよいかもしれない。牢屋のある保安官事務所の内部という閉鎖空間で歌われていた 「ライフルと愛馬」を砂場の上に直接置かれたテーブルを囲んで海辺に住む隣人たちと歌う場面は、素直によかった。

なんか無駄に長くなっているので、ここで打ち切ることにする。

大阪大学入試問題 (2024 年, 数学)

すでに話題になっているようだが, 大阪大学の 2024 年数学の文理共通問題に立体幾何の証明問題が出題されている. これは面白そうだと思ってやってみた. 制限時間もあるので, どこまで詳しく証明を書けばよいのかわからないが, 立体幾何のよく知られた基本命題は (すでに以前の記事で証明済みなので) ここでは証明なしに使った.

【問】

【解】
まず, 存在証明をする. 存在証明は実際に存在する具体例をひとつでもあげればよい. どうやって直線  l と直線  m の共通垂線を作図できるか考えるのが一番簡明だと思う.

直線 l を含み, 直線 m に平行な平面  P を作ることができる. (なぜかというと, 直線 l の任意の点から, 直線  m に平行な直線をただひとつ引くことができる. この平行線と l を含む平面 P がただひとつ存在する. 平面 P は,  l を含んでいるので, ねじれの位置にある  m を含まない. この平面  P が直線  m に平行であることはすぐに証明できる. 参考: 都立国立高校入試問題から - ノリの悪い日記)

次に直線  m の任意の点  K から平面  P に垂線を下ろし, 垂線の足を  L とする (三垂線の定理を活用して垂線を作図できる). そうすると  m と直線 KL を含む平面  Q が定まる.  Q KL を含むので, 平面  P と平面  Q は垂直である. 平面 P と平面  Q の交線はもちろん, 直線  m と平行である. 交線と直線  l の交点を  B とする (直線  l と直線  m は平行ではないので, 交線は直線  l と必ず一点で交わる). B を通り,  KL に平行な線を引いて, 直線  m との交点を  A とすれば,  AB は直線  l にも直線  m にも垂直な直線である.

次にただひとつしか存在しないことを証明する.

下図のように異なる二つの共通垂線  AB ,  CD が存在すると仮定する (直線外の同一点を通ってその直線に下ろす垂線は唯一存在するという平面幾何の定理から  A \neq C かつ  B \neq D としてよい). B を通り  m に平行な直線  m' と,  D を通り  m に平行な直線  m'' はともに平面  P に含まれている (もしそうでないとすると, 同一点を通って m に平行な線が二本あることになって平行線の公理に矛盾する). このことから容易にわかるように直線  AB と直線  CD はそれぞれ平面 P に垂直である. すなわち, 直線  AB と直線  CD は平行である. つまり直線  AB と 直線  CD をともに含む平面が存在し, このことから, 直線  l と直線  m もその平面上にあることが帰結される. しかし, 直線  l と直線  m はねじれの位置にあり, 言い換えればどんな平面も直線  l 全体と直線  m 全体を同時に含むことはできない. したがって矛盾する. このことから, 直線  AB と直線  CD は一致し, 唯一性が証明できた.


//

※ 直線 l を含み, 直線 m に平行な平面が  P 以外に存在すると仮定し, この平面を  P' とすると,  P P' の交線は  l である.  l 上の任意の点から  m に平行線をひくと. その平行線は  P にも  P' にも含まれるから,  l に一致する. すると  l m が平行になって, ねじれの位置にあることに矛盾する. したがって直線 l を含み, 直線 m に平行な平面は  P 以外に存在しない.

※ 論証的な立体幾何が大学入試問題から姿を消したのは, 昭和 36 年あたりではないかと推測している. 以下のような各種資料から明治時代にも論証的な立体幾何が教授されていたことがわかり, その教授内容には「ねじれ二直線の共通垂線」も含まれていた. ただし「ねじれ二直線」は「同一の平面中に在らざる二直線」と表現されている. 戦前に「捩れ」という用語がまったく使用されていなかったわけではなく, たとえば杉村欣次郎著の『立體幾何學』 (昭和 12 年) では「捩れの位置」 という用語がすでに定義されて使用されている.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasme/19/2/19_101/_pdf/-char/ja

※ 立体幾何は現在, 中学 1 年の後半に「直感立体幾何」というべきものを習うわけだが, これについて次のような感想を抱いたことがある.

空間認識のイマージュ - ノリの悪い日記

『駅馬車』の広告

戦前 (1940 年) の映画雑誌の広告を見ていたら『駅馬車』の広告に小津安二郎 (旧字だから, 小津安二郞である) と溝口健二のコメントがある。これが淀川長治さんが当時在籍していた日本ユナイテッド・アーチスツで作られた宣伝なのか。

プリズム

神奈川県公立高校入試, 理科の問題は最初にプリズムの問題だった.

プリズムに関しては, 下の図からわかるように

 \theta + \phi = \alpha

という関係がある.  \alpha はもちろん定数で, 「三角柱」 が「正三角柱」なら 60^\circ である.

高校入試では定番の太陽光発電パネルの問題も出ていたが, これも発電効率がもっとも高くなるとき,

(パネルの角度)+ (太陽高度) = 90°

が把握できていれば簡単な問題であろう.

神奈川県公立高校入試 2024 数学から

例年より小問がひとつ減った.

【解】
(ア) 同じような問題を中 1 の定期テスト対策でやったばかりである. 直線と平面の垂直を理解していることと, ピタゴラス (三平方) の定理の基本問題である. 暗算できるだろう. 答えは 2 番.

(イ) 展開図を描き直すときにわからなくなるむきは「有向角」を使うと考えやすい.

(余弦定理を使ってもよいし, これくらいだったら平面座標において 2 点間の距離を計算したってよいわけだが……)  GH の長さを求めるために補助線を引く( DJ \parallel GH,  JK \perp BD).

 BJ: BA = JK: AI =  BK: BI

だから,

 JK = 10/3

 BK = 5/3 から, KD = 25/3

したがって,

 \displaystyle{GH 
\\= \frac{1}{2}JD
\\= \frac{5}{6}\sqrt{2^2 + 5^2}
\\= \frac{5\sqrt{29}}{6}
}
//

下の問題の正解率がどの程度か知らないが, 方程式で解けばよいのだから, 算数は不要だという俗説は嘘だと思う. 算数が理解できないと (この場合は四則の意味をどの程度理解しているかということであり, 私見では「みはじ」のようなものは理解しているうちに入らない), 方程式の立式すら満足にできなくなるという現実をよく見るべきだろう.

【解】
食塩水は最初も最後も 300 g のままである.

食塩は最初に 12 g, 次に (12 - 4a/100) g, 最後に  (12 - 4a/100 + a) g で, これが 36 g に相当するから,

 12 + 24a/25 = 36
a = 25
//

特殊角を使う問題。

【解】
\triangle DBC は正三角形. したがって, \triangle CED は二等辺三角形. 線分  GH の長さを求めることは平行線 DE BF の距離を求めることに他ならない.

 \angle ADE = \angle ABF = 45^\circ

したがって,

 GH = DI = 12/\sqrt{2} = 6\sqrt{2}


//

図形の他の問題は,

【解】 (ii) だけ解答する. 下図で,

 \angle ADI = 61^\circ

だから,

 \angle DAI = 180^\circ - 61 ^\circ - 73^\circ = 46^ \circ

 \angle AGE = 61^ \circ
 \angle EAG = 23^ \circ

だから,

 \angle AEB = 61^\circ + 23^\circ  = 84^ \circ

である.


//

問4 (ウ) も普通は等積変形を使って解く図形的な問題である.

【解】
(ウ) 下図のように, E を通り,  y = -3x と平行な直線を引き  \triangle CEF と等積な  \triangle CQF を得る ( Q は直線  BD 上の点でもある).  CO: OF = 2:1 だから,  \triangle CQF \triangle CGF は等積である. したがって, P は, 線分  GQ の中点である.

Qx 座標  x_Q は,

 x_Q/2 + 3 = -3x_Q -15

を解いて  x_Q = -36/7

Px 座標  x_P は,

 x_P/2 + 3 = -3x_P

を解いて  x_P= -6/7

Gx 座標  x_G は,

 (x_G + x_Q) /2 = x_P
  x_G -36/7= 2 \times (-6/7)

を解いて  x_G= 24/7


//


※ 問 1 (オ) の球の体積も加えると 30 点程度が図形分野の配点である.

※ データの分析の問題は地道にやればよいのだが, 最後の小問の IV が正しいかどうかだけやっておく.

(最後の小問の IV は真か偽か)

平均のとりうる値の上限を調べてみる (任意の階級に属するデータが例外なくその階級の上端の値をとったものと仮定して平均を計算すればよい). 平均の上限を仮に 25 分とする.

A中学校:
5\times(8-10) + 10\times(7-5) 
\\ \quad+ 15 \times (2-4) + 20
\\=  -10 + 20 -30 + 20
\\= 0

真の平均は 25 分未満であるといえる.

B 中学校:
5\times(11-10) + 10\times(1-7) 
\\ \quad + 15 \times (7-9) + 20 \times 4
\\=  5 -60 -30 + 80
\\= -5

真の平均は 25 分未満であるといえる.

C 中学校:
(実際は計算するまでもないが)

5\times(7-12) + 10\times(5-9) 
\\ \quad + 15 \times (1-14) + 20 
\\=  -25 -40 -195 + 20
\\= -240

真の平均は 25 分未満であるといえる.

したがって, IV の主張は正しい.

上野昻志さん

前の記事で白土三平の『忍者武芸帳』のことを書いた後、偶然にも上野昻志さんが 2020 年に書いた『「読解力」を巡る一考察』なる文章をネットで見つけて、それを読んでいたら『忍者武芸帳』 のことが出てきた。上野さんの文章は中公新書の『教養主義の没落』 (竹内洋) をひきながら, 学生における読書の歴史的変遷を辿ってみようというもので、なかなか面白かった。一部だけあげておく。 なお、上野さんは別のところで「単行本漫画一冊がせいぜい三万円で、しかも二冊描いて売れなければ即座にクビという劣悪な条件の下で、「命がけ」で食うために描くという行為は、諸々の意識の問題に向うよりも、まずは直接的に肉体の苦痛にぶつかったはず」であると書いている。 下に書いている「思想とでもいうべきもの」は「唯物史観」とか「階級闘争」とかとは無関係で、本人の言葉を借りれば「桎梏としての肉体」が露呈されたものと読みかえることができるだろう。

1959年に高校を卒業したわたしは、翌60年に大学に進むが、浪人時代は、午前中は予備校、午後は新宿のジャズ喫茶で、レコードから流れる大音響のモダンジャズに浸っていた。その点では、エルビスから始まったわたしのなかのアメリカ音楽遍歴は、ジャンルを変えながら続いていたといえよう。だから、大学に入ると同時に安保闘争の波に呑み込まれたのだが、デモを組んだ「学友」の誰もがモダンジャズを聴いていないことに失望して、解散になると一散にジャズ喫茶に駆け戻ったのである。

大学の同級生に教えられて読んだ本といえば、白土三平の『忍者武芸帖』(1959~1962年・全17巻)がダントツの一位である。これは、三洋社という貸本屋向けの出版社から刊行されていた単行本形式のマンガなので、普通の書店にはない。その代わりというわけでもないが、ラーメン屋のカウンターの隅や、理髪店の待合椅子の脇に積まれていた。まず、そこでラーメンを啜りながら読み、欠けている巻は貸本屋に行って借りるというようにして読んだのだが、圧倒された。

わたしも、子ども (の) 頃は少年雑誌に掲載されたマンガを読んでいるし、手塚治虫には夢中になったことはあるが、それもしばらく途絶えていたのだ。だから、白土の名も存在も知らなかった。それが、この『忍者武芸帖』では、主要人物の造形といい、リアルで強いタッチの絵柄といい、コマからコマ、ページからページへと展開するストーリーの運び、そして、それらを通して訴えかけてくる思想とでもいうべきものに引き込まれたのである。そこから、白土三平の『忍者武芸帖』以後の新作を読みたいと、友人とも語り合ったのだが、これが、光文社から出ている『少年』の付録? としてある『サスケ』のほかはなく、1965年になって、前年に創刊された漫画雑誌『ガロ』に出会うまで、空しく待つしかなかったのである。そして、『ガロ』との出会いが、大袈裟にいえば、以後のわたしの人生を決めるのだが、それは、さしあたって関係ない。

要するに、わたしの場合、マンガにジャズに、それ以前から続く映画にと、サブカルチャーに半身浸かりながらの学生生活だったわけだが、程度の差こそあれ、わが周辺の学生は、似たようなものだった。そして、それは、学部を修了する1964年頃には、より一般的な姿になっていくのである。大学生がマンガを読む、と世間が揶揄的に問題化したのは、1966年頃だと思うが、その担い手は、わたしなどより5,6歳下の、のちに団塊世代と呼ばれる人たちである。ただ、彼らとて、教養のためなどという意識はなくても、マルクスやヘーゲルの著作を読んでいた。それらとマンガとを、自由に往還するところに、60年代後半の学生たちはいたのである。おそらく、そこでは、1955年の京都大学キャンパスにおけるように、「教養書をどれだけ読んでいますか」というような問いは成り立ちようもなかったのではないか。

(中略)

そして、読書に関わって、当時の中学生や高校生、さらには大学生にも、気分として強くアピールしたのは、寺山修司の、「書を捨てよ、町へ出よう」というマニフェストであろう。『書を捨てよ 町へ出よう』という書名の評論集が芳賀書店から刊行されたのは1967年だが、翌年には天井桟敷の第7回公演として上演され、1971年には、寺山自身の監督で映画化もされている。それだけ、この言葉には想いがあったのだろう。中城ふみ子の『乳房喪失』に触発されて、歌人として出発した寺山修司は、1950年代末から評論、詩、演劇、映画、さらには競馬評論と、マルチな才能を発揮していたが、60年代半ばには、青少年のカリスマ的な存在になっていた。そのため、このマニフェストも、若者たちには、インパクトをもって受け止められたと思う。だが、これが秀逸だと思うのは、「町へ出よう」というのが、すでに述べたような芸術運動とも暗黙のうちに連動していたからだ。美術でいえば、美術館からその外の町へ出たのであり、演劇でも、状況劇場は、既存のホールから町に出たのだから。寺山自身が実際に町に出たのは、だいぶあとの1975年の市街劇「ノック」においてだが(彼はそのため住民から不審者として警察に通報される)、それ以前でも、天井桟敷内の舞台と客席との境界を取っ払おうと、様々な試みをしていたのである。さらにいえば、彼ら表現者とは別に、学生たちは、ベトナム反戦を旗印に町へ出た。

しかし、寺山自身は、教養主義的な知のあり方を嫌悪していたにしても、書に育てられたのであって、その意味では、書を捨ててはいない。ただ、既存の書物のなかだけに、知識や、論理や、それこそ教養を求めるのではなく、町という表象を通して現実の世界と出会え、そこには新しい知があるぞと訴えたのである。その点では、『家出のすすめ』(1963年)が、文字通り若者に対して家出をすすめるというより、最終的に精神的な自立のすすめであるのと同様である。実際、彼の言葉を丸のまま鵜呑みにするほどナィーブな子どもは別にして、大半は、書は書として読んでいたはずである。ただ、すでに、知のあり方が大きく変動したなかでは、教養のために貯金をするように「詰め込む」式の往時の教養主義的読書は、この段階で、ほとんど地を払ったのではないか。

(中略)

寺山修司が、あのようなマニフェストを掲げられたのは、学生はもとより、大方の人にとって、本を読むことが当たり前だった時代だったからだ。

数列の問題

小さいときに見たテレビ番組を大人になって再び見て郷愁を感じることはあっても, 作品として面白いと思うことはない. しかし, 白土三平『サスケ』のテレビアニメーションは唯一の例外である. これとても傑作というほどではないが, 1960 年代の子供向けテレビとは思えないものに仕上がっていて, いま見てもじゅうぶん鑑賞に耐えるのが不思議である. もっとも, 白土三平であれば『忍者武芸帳』のような漫画の方がはるかに面白い.

横浜国大, 理系の 2017 年の数列の問題を解いてみたのであげておく.

【解】
(1)
a_1 = 1
 b_1 = 2
 \displaystyle{a_2 = a_1 - \frac{1}{b_1 }= 1- \frac{1}{2} = \frac{1}{2}}
 b_2 = 3
 \displaystyle{a_3 = a_2 - \frac{1}{b_2} = \frac{1}{2} -\frac{1}{3} = \frac{1}{6}}
 b_3 = 7

(2)
 \displaystyle{\frac{1}{a_n}} が自然数であることを帰納法によって証明する.

 n = 1 のとき,  \displaystyle{\frac{1}{a_1} = 1} より成立.
 n = k のとき,  \displaystyle{\frac{1}{a_k}} が自然数であると仮定すると,

 \displaystyle{b_k = \frac{1}{a_k} + 1= \frac{a_k +1}{a_k}
} である.

 \displaystyle{a_{k +1}
\\= a_k - \frac{1}{b_k}
\\ = a_k - \frac{a_k}{a_k+1}
\\= \frac{a_k^2}{a_k + 1}
}

したがって,

 \displaystyle{\frac{1}{a_{k +1}}
\\= \frac{a_k + 1}{a_k^2}
\\= \frac{1}{a_k} + \left( \frac{1}{a_k}\right)^2
}

 \displaystyle{ \frac{1}{a_k}},  \displaystyle{ \left(\frac{1}{a_k}\right)^2} が自然数なので,  \displaystyle{\frac{1}{a_{k+1}}} は自然数で,  \displaystyle{\frac{1}{a_n}} が自然数であることが証明できた.

再び帰納法により,

 n = 1 のとき,  b_1a_2 = 1

 n =k のとき,  b_1b_2\cdots b_ka_{k+1} = 1 を仮定する.

 n = k+1 のとき,
 \displaystyle{b_1b_2\cdots b_{k+1}a_{k+2}
\\=b_1b_2\cdots b_{k+1}\left(a_{k+1} - \frac{1}{b_{k+1}}\right)
\\= b_1b_2\cdots b_k( a_{k+1}b_{k+1} - 1)
\\= b_1b_2\cdots b_ka_{k+1}
\\=1}

ここで,  \displaystyle{b_{k+1} = \frac{a_{k+1} + 1}{a_{k+1}}} から  a_{k+1}b_{k +1} -1 = a_{k+1} であることを使った.

以上より, 任意の自然数 n で,  b_1b_2 \cdots b_na_{n+1} = 1 が成立する.

(3)
b_n は自然数だから,

 a_{n+1} = a_n - 1/b_n

から,

 a_{n+1} < a_n
 \displaystyle{\frac{1}{a_{n+ 1}} > \frac{1}{a_n}}
 \displaystyle{1+ \frac{1}{a_{n+ 1}} > 1 + \frac{1}{a_n}}

したがって,

 b_{n+1} > b_n

(1) の結果を使って ( n は十分に大きいとしてよい),

\displaystyle{ 0< a_{n+1} = \frac{1}{b_1b_2\cdots b_n} <\left(\frac{1}{b_1}\right)^n =\left(\frac{1}{2}\right)^n}

はさみうちの原理より,

\displaystyle{
\lim_{n \to \infty} a_{n+1} = 0
}

 \begin{align}
S_n &= \sum_{k = 1}^{n} \frac{1}{b_k}\\
&=\sum_{k = 1}^{n}(a_k - a_{k+1}) \\
&= a_1 - a_{n+1}\\
&= 1 - a_{n+1} \\
\end{align}

したがって,

 \displaystyle{\lim_{n \to \infty} S_n = 1}

クロモジ

部屋の加湿を忘れて寝てしまい、翌朝喉の調子が良くなかったので、普段は舐めることなどない飴でも試してみようと思いたち、近所のドラッグストアを物色していたら、「クロモジ」という名前が向こうから勝手にやってきて目に入ったので、迷うことなく「養命酒製造」と赤字でデカデカと書かれたその袋を購入した。

幸田文は『木』の中で、 草木に心をよせることについて、

「心をよせるなど、そんなしっかりしたことでない。毎日の暮らしに織り込まれて見聞きする草木のことで、ただちっとばかり気持がうるむという、そんな程度の思いなのである」

と適切に書いているが、 「クロモジ」 という文字を目にした瞬間、そういえば、クロモジのあの黄色の花が咲くのももうすぐだなあとか、その花の写真は撮ったことがなかった、近くだと「泉の森」にあったなあとかいろいろ考えて、まさに「気持がうる」んだのである。

柳田國男の『故郷七十年』の「鳥柴の木」には、次のような贅沢で嫉妬したくなるような幼児体験が綴られている。 クロモジの木を燃やす香りと米の炊かれる匂い!

子供のころ、私は每朝、厨の方から傳はつて來るパチ〳〵といふ木の燃える音と、それに伴つて漂つて來る懷しい匂ひとによつて目を覺ますことになつてゐた。
 母が朝飯のかまどの下に、炭俵の口にあたつていた小枝の束を少しづゝ折つては燃し附けにしてゐるのが、私の枕下に傳わつたのであつた。
 今でも炭俵の口に、細い光澤のある小枝を曲げて輪にして當ててゐる場合が多いやうであるが、そのころ私の家などでは、わざ〳〵山の柴木を採ることはしないで、それをとつておいて、每朝、用ゐてゐたわけである。じつはその木がいつたい何といふ名であるかを長らく知ることもなかつた。
 ところが、たま〳〵後年になつて、ふと嗅ぎとめた焚火の匂ひから、あれがクロモジの木であつたことに氣がついたのである。

2024 年共通テストから

2024 年の数 IIB の数列の問題は小問の (1), (2) はともかく, (3) の最後の小問 (iv) だけはちょっと面白い. 存在命題だから, 実際に命題を真にする数列 \{c_n\} がひとつでも存在すればよい. また存在命題を証明するには命題を真にする具体例をひとつあげればよい (具体例をどうやって見つけたかなどの理由を書く必要はない. また具体例が見つけられない場合は背理法などによって証明することもある). (I) の命題が真だと仮定すると命題 A と矛盾するので偽. (II) は第 1 項から第 100 項まで,  c_k = -3 であるような数列 \{c_n\} が存在するので真. (III) も第 1 項から第 99 項まで,  c_k = -3c_{100} = 3 であるような数列 \{c_n\} が存在するので真.



PIE

包除原理  \text{(PIE)} を使う入試問題を探していたら, 2023 年の東大の文理共通問題があったのでやってみる. この問題の問 (2) まで解くつもりなら, 問 (1) を (2) につながるようにどう解くかということが大事になる. もちろん問 (2) を捨てる場合にはこの限りではなく, 普通に解けばよい. 黒玉は 3 個しかないので  \text{PIE} で極端に複雑にならずいけるだろうという予想は立てられる.

【問】

(1)
(2) につなげるために, この問は重複組合せを使って (2) を解くための構想を確認しながら解く.

まず赤玉 4 個を最初に並べる.

 x_1, R, x_2, R, x_3, R, x_4, R, x_5

ここで, 赤玉が隣り合わないので,  x_i を置かれる玉の個数として (まず玉を区別しないで考える),

 x_1 + x_2 + x_3 + x_4 +x_5 = 8
 x_1 \geq 0, x_2 , x_3, x_4> 0, x_5 \geq 0

が成り立つ.

 x_2 = x_2'+1
 x_3 = x_3' +1
 x_4 = x_4' +1

と可逆な変数変換をして,

 x_1 + x_2' + x_3' + x_4' +x_5 = 5
 x_1 , x_2' , x_3', x_4', x_5 \geq 0

とすると, 整数解の順序対,

  (x_1 , x_2' , x_3', x_4', x_5)

の個数は, 重複組合せより,

  {}_5\mathrm{H}_5{} = {}_{5+5-1}\mathrm{C}_5 = {}_9\mathrm{C}_4

で与えられる. したがって,   (x_1 , x_2 , x_3, x_4, x_5) の順序対の個数も  {}_9\mathrm{C}_4 で与えられる.

求める確率 p は, 玉の区別を考慮して,

 \displaystyle{
p = \frac{{} _9\mathrm{C}_48!4!}{12!} = \frac{14}{55}
}

(2)
(1) での赤玉を最初に並べるセッティングをそのまま使って, 黒玉も隣り合わない場合の数を \text{PIE} で求める.

全体集合  \Omega の濃度は, (1) で求めた通りで,

 |\Omega| =  {}_9\mathrm{C}_48!4!

3 つの黒玉を  BL_1, BL_2, BL_3 とし,

 P_1:  BL_1 BL_2 が隣り合う.
 P_2:  BL_1 BL_3 が隣り合う.
 P_3:  BL_2 BL_3 が隣り合う.

として, \text{PIE} より求める場合の数は, (隣り合う黒玉は 1 つにまとめて考えるという常套手段を使って)

{}_9\mathrm{C}_4  8!4! - 3\cdot {}_8\mathrm{C}_4 2!7!4!   + 3\cdot {}_7\mathrm{C}_4 2!6!4!

したがって, 求める条件付き確率 q は,

 \displaystyle{
q \\= \frac{{}_9\mathrm{C}_4 8!4! - 3\cdot {}_8\mathrm{C}_4  2!7!4!   + 3\cdot {}_7\mathrm{C}_4 2!6!4! }{ {}_9\mathrm{C}_4 8!4!}
\\= \frac{{}_9\mathrm{C}_4\cdot 2^2 \cdot 7-  {}_8\mathrm{C}_4\cdot 3 \cdot 7  +  {}_7\mathrm{C}_4 \cdot 3}{ {}_9\mathrm{C}_4 \cdot 2^2 \cdot 7}
}

{}_9\mathrm{C}_4 = 2 \cdot 3^2 \cdot 7
 {}_8\mathrm{C}_4 = 2\cdot 5 \cdot 7
 {}_7\mathrm{C}_4 = 5 \cdot 7

これから,

 \begin{align}
q&=  \frac{2^3 \cdot 3 \cdot 7 - 2\cdot 5 \cdot  7 +  5 }{2^3 \cdot 3 \cdot 7 }\\
&= \frac{103}{168}
\end{align}
//

共通テストから (3)

「モンモール (Montmort) のめぐりあいの問題」, もっと一般的には「包除原理 (The Principle of Inclusion and Exclusion; PIE)」——高校でも簡単な場合を習うが, シルヴェスター (Sylvester) は形式論理の定理として証明した*1 ——の応用なのだが, ここでは誘導に忠実に解くことにする.

n 人で交換会が終了する場合の数を s_n とおく. また n 人で交換会が一回で終了する確率  p_n は,

 \displaystyle{ p _n = \frac{s_n}{n!}}

で与えられる.

s_1 = 0, p_1 = 0 は明らか.

(1)(i)
 s_2= 2!- {}_2\mathrm{C}_1\cdot s_1 -  {}_2\mathrm{C}_2 =1
 \displaystyle{p_2=\frac{s_2}{2!}= \frac{1}{2}}

(1)(ii)
 \begin{align}
s_3 &= 3! - {}_3\mathrm{C}_1\cdot s_2 - {}_3\mathrm{C}_2 \cdot s_1 - {}_3\mathrm{C}_3\\
&= 6 - 3 -0-1\\
&= 2
\end{align}
\displaystyle{p_3 = \frac{s_3}{3!} = \frac{1}{3}}

(1)(iii)
求める確率を  p とすると,
 \displaystyle{p 
\\= p_3 + (1-p_3)p_3 
\\ \quad + (1-p_3)^2 p_3+ (1-p_3)^3p_3
\\ =1- \left(\frac{2}{3}\right)^4
\\=\frac{65}{81}}


(2)
 s_4 
\\ = 4! - {}_4\mathrm{C}_1\cdot s_3 - {}_4\mathrm{C}_2 \cdot s_2 -_4\mathrm{C}_3 \cdot s_1 - _4\mathrm{C}_4
\\= 24 - 4\cdot 2 - 6-0-1
\\=9
\displaystyle{p_4 = \frac{s_4}{4!} = \frac{3}{8}}

(3)
 s_5
\\ = 5! - {}_5\mathrm{C}_1\cdot s_4 - {}_5\mathrm{C}_2 \cdot s_3
\\ \quad -_5\mathrm{C}_3 \cdot s_2 - _5\mathrm{C}_4 \cdot s_1 - _5\mathrm{C}_5
\\= 120- 5\cdot 9 - 10 \cdot 2 -10- 0-1
\\=44
\displaystyle{p_5 = \frac{s_5}{5!}= \frac{11}{30}}

(4)
E が自分のプレゼントを受け取るのは,  s_4 通り. E が自分以外のプレゼントを受け取るのは,  s_5 通り. したがって, 求める条件付き確率は,

 \displaystyle{\frac{s_5}{s_4 + s_5} = \frac{44}{9 + 44} = \frac{44}{53}}

※ 包除原理で求める. この場合, 全体集合  \Omega の要素は任意に並べた  n 個のプレゼントの順列 ( \Omega の濃度  |\Omega| = n!) で, 第  i  \left(i \in \{1,2,\cdots, n\}\right) 番目に番号  i のプレゼントがくる順列が部分集合  P_i に入ると考え, どの部分集合  P_i にも属さない要素 (順列)

 x \in \Omega -P_1 \cup P_2 \cup \cdots \cup P_n

の個数を求めるという設定である.

 s_2
\\= 2!- {}_2\mathrm{C}_1\cdot 1! +   {}_2\mathrm{C}_2
\\ =1

 s_3 
\\= 3! - {}_3\mathrm{C}_1\cdot 2! + {}_3\mathrm{C}_2 \cdot 1!- {}_3\mathrm{C}_3
\\= 6 - 6 + 3 -1
\\= 2

 s_4
\\= 4! - {}_4\mathrm{C}_1\cdot 3! + {}_4\mathrm{C}_2 \cdot 2! - {}_4\mathrm{C}_3 \cdot 1! +{}_4\mathrm{C}_4 
\\= 24 - 24  + 12  -4 + 1
\\= 9

 s_5
\\= 5! - {}_5\mathrm{C}_1\cdot 4! + {}_5\mathrm{C}_2 \cdot 3!
\\ \quad - {}_5\mathrm{C}_3 \cdot 2! +{}_5\mathrm{C}_4 \cdot 1!  - {}_5\mathrm{C}_5
\\= 120 - 120  + 60-20  + 5  - 1
\\= 44
//

※ 漸化式で求めると,
 s_1 =0,  s_2 = 1,
 s_3 = (3-1)(s_1 + s_2) =2
 s_4 = (4-1)(s_2 + s_3) =9
 s_5 = (5-1)(s_3 + s_4) =44
//

※ 漸化式の一般の証明の代わりに,
 s_5 = (5-1)(s_3 + s_4) を示す. 一般の場合の証明も同様にできる.

 s_4
\\= 4! - {}_4\mathrm{C}_1\cdot 3! + {}_4\mathrm{C}_2 \cdot 2!
\\ \quad - {}_4\mathrm{C}_3 \cdot 1! +{}_4\mathrm{C}_4 
\\= 4! (1 -1/1! + 1/2! - 1/3! + 1/4! )

 s_3
\\= 3! - {}_3\mathrm{C}_1\cdot 2! + {}_3\mathrm{C}_2 \cdot 1!- {}_3\mathrm{C}_3
\\= 3!  (1 -1/1! + 1/2! - 1/3! )

 s_3 + s_4
\\= 5\cdot 3! (1 -1/1! + 1/2! - 1/3!) 
\\ +(-1 )^4

(5-1)(s_3 + s_4)
\\= 5!( 1 -1/1! + 1/2! - 1/3!)
\\ \quad + (4 + 1 -1)(-1 )^4
\\= 5!( 1-1/1! + 1/2! - 1/3!)
\\ \quad + 5 \cdot (-1 )^4 +(-1)^5
\\= 5!( 1-1/1! + 1/2! - 1/3!
\\ \quad + 1/4! - 1/5!)
\\= s_5
//

*1:『初等数学アラベスク』 (高橋進一著,1956) 参照. 包除原理 \text{PIE} の証明は全体集合の要素数についての帰納法を使って, 二項定理からの帰結を利用するものが紹介されている. (他の証明もいろいろあって, 個人的には特性関数を使った証明が気に入っている. というのも, 二つの重要事項であるド・モルガンの法則と包除原理の関係を教えてくれるからだ.) この本は入試問題で取り上げられるようなネタを詳しく読みやすく解説してくれている.

共通テストから(2)

数 1A の共通テスト問題 (2022 年) の整数解の問題は, 素直に誘導に乗る場合の解を記載していなかったので, ここに一応あげておく. (他の大問も皆そうだが, 小問に順番に答えてゆく過程での「単線的」ともいえる反復構造がこの年の共通テストの大きな特徴である. この問の場合, x はともかく y の値を求めるのにも反復的に使える手続きがあったのだと見抜くことは難しい.)

1)  5^4 \equiv 1 \pmod{2^4} を用いると,

 5^4x -2^4 y = 1

から,

 x \equiv 1 \pmod{2^4}

 x の正の整数の最小値は,  x = 1 .

 \begin{align}
y &= \frac{5^4 -1}{2^4}\\
&= \frac{24 \cdot 26} {2^4}\\
&= 3\cdot 13\\
&= 39
\end{align}

また,  x2 桁の正の整数の最小値は,  x = 17 . このとき, 上の結果から,

 5^4 = 2^4  \cdot 39 + 1

を使って,

 \begin{align}
y &= \frac{5^4 \cdot 17-1}{2^4}\\
&= \frac{17(2^4\cdot39+1)-1}{2^4}\\
&= 17 \cdot 39 + 1\\
&= 664\\
\end{align}

(2)
(1) から,

 5^4 = 2^4 \cdot 39 + 1

だから,

 5^8 = 2^8 \cdot 39^2 + 2^5 \cdot 39 + 1

つまり,

 5^8 \equiv 1 \pmod{2^5}
//

(3)
 5^5x - 2^5y = 1

から,

 5^5x \equiv 1 \pmod{2^5}

(2) の結果

 5^8 \equiv 1 \pmod{2^5}

から,

 5^5x \equiv 5^8 \pmod{2^5}
 5^5(x-5^3) \equiv 0 \pmod{2^5}

であるが,  5^5 2^5 は互いに素であることより,

 x - 5^3 \equiv 0 \pmod{2^5}

つまり,

 x \equiv 5^3 \pmod{2^5}

である.

 x3 桁の正の整数で最小なのは,

 x = 125

このとき, (2) の式を使って

 \begin{align}
y &= \frac{5^8 -1}{2^5}\\
&= \frac{ 2^8 \cdot 39^2 + 2^5 \cdot 39} {2^5}\\
&= 2^3 \cdot 39^2 + 39\\
&= 39(2^3\cdot39+1)\\
&= 39\cdot 313\\
&= 12207
\end{align}

(4)
 11^4 \equiv 1 \pmod{2^4} を用いて, (2) の考察と同様にして,

 11^8 \equiv 1 \pmod{2^5}

だから,

 11^5x - 2^5y = 1

 \begin{align}
11^5x &\equiv 1 \pmod{2^5}\\
&\equiv 11^8 \pmod{2^5}\\
\end{align}

 11^5 2^5 は互いに素であることより,

\begin{align} x  &\equiv 11^3 \pmod{2^5} \\
&\equiv 11\cdot121 \pmod{32}\\
&\equiv 11 \cdot (-7)  \pmod{32}\\
&\equiv -77 + 96  \pmod{32}\\
&\equiv 19 \pmod{32}\\
\end{align}

 x の正の整数の最小値は,  x = 19 . このとき,

 \begin{align}
 \frac{11^4 -1}{2^4} &= \frac{122 \cdot 120} {2^4}\\
&= 61\cdot 15\\
&= 915\\
\end{align}

から,

11^4 = 915 \cdot 2^4 +1

を利用して,

 \begin{align}
2^5y &= 11^5\cdot19 -1\\
&= (11 \cdot 19)\cdot 11^4 -1\\
&=209(915 \cdot 2^4 + 1)-1\\
&= 209\cdot915 \cdot 2^4 + 208\\
\end{align}

より,

 \begin{align}
2y &= 209\cdot915 + 13\\
&= 200 \cdot 915 + 9 \cdot 915 + 13\\
&= 200 \cdot 915 + 10 \cdot 915 -902\\
\end{align}

したがって,

 \begin{align}
y &= 91500 + 4575 - 451\\
&= 91500 + 4124\\
&= 95624\\
\end{align}
//

y を求めるのは単なる計算だから (とそう思うのが落とし穴なのだが……), いろいろなやり方がある. 誘導に乗らないやり方を一つ示せば,

 2^5y = 11^5 \cdot 19 -1

 \begin{align}
11^4 &= (120 +1)^2 \\
&= 14400 + 240 +1\\
&= 14641
\end{align}

 \begin{align}
11^5 &= 14641(10 +1) \\
&= 146410+ 14641\\
&= 161051
\end{align}

 \begin{align}
11^5 \cdot 19 &= 161051 (20-1) \\
&= 3221020- 161051\\
&= 3200000-( 161051-21020) \\
&= 2^5\cdot10^5 - 140031
\end{align}

 \begin{align}
2^5y &= 2^5\cdot10^5  - 140032\\
&= 2^5(10^5 -1) - 140000\\
&= 2^5(10^5-1 - 7\cdot 5^4)
\end{align}

 \begin{align}
y &= 99999-7\cdot5^4\\
&= 99999-4375\\
&= 95624
\end{align}
//

共通テストから

数 1A の共通テスト問題 (2022 年) は整数解の問題はやった記憶はあるが, 他の問題もやったので一部をあげておく.

(1)  p = 4 ,  q = -4 のとき  n = 3,  p = 1 ,  q = -2 のとき  n = 2

(2)
 f(x) = x^2 -6x +q
 g(x) = x^2 + qx -6

とおき,  f(x) = 0,  g(x) = 0 のただひとつの共通実解を a とするならば,

 \begin{align}
g(a) - f(a) &= (q+6)(a-1)\\
&=0 \end{align}

を満たす.  q = -6 のとき,  f(x) \equiv g(x) (多項式として等しい) となり, 重解も持たないので  a はただ一つの共通実解ではない. したがって  q \neq -6 であり, これから,  a = 1 を必要条件としてよい. a = 1 のとき,  f(1) = 0 から  q = 5 となる. 解と係数の関係により,  f(x) = 0 の他解は 5,  g(x) = 0 の他解は -6 であり,  n =3 となる.

次に  f(x)= 0 が重解を持つ場合は,

 D/4 = 9 -q =0

から,  q = 9 で, このとき  g(x) は異なる 2 実解を持ち, また  f(x) = 0 g(x) =0 は共通実解も持たないので,  n = 3 となる. //


(3)
 \begin{align}
y &= x^2 - 6x + q\\
&= (x-3)^2 + q -9\\
\end{align}

つまり,

y-q + 9 = (x-3)^2

したがって, グラフは  y 軸正の方向に移動する (6 番).

 \begin{align}
y &= x^2 +qx -6\\
&= (x+q/2)^2 - q^2/4 -6\\
\end{align}

つまり,

y + q^2/4 + 6 = (x+q/2)^2

したがって, グラフは  x 軸負の方向, かつ  y 軸負の方向に移動する (1 番).

(4)
 Q = \{q \in U| \ 5< q <9\}

とする. 集合  A, B はそれぞれ

 A = \{x|\  \exists q \in Q; \ x^2 -6x + q < 0\}

 B = \{x|\  \exists q \in Q; \ x^2 + qx -6 < 0\}

の意味だと解釈する.

 f(x) = x^2 -6x +q
 g(x) = x^2 + qx -6

とおくと,  \forall q \in Q で,

 f(1) = g(1) = q-5 > 0

 f (x) の軸の位置は  x = 3>1 で,

 f(3) = q -9 < 0

 g (x) の軸の位置は  x = -q/2 < 1 で,

 g(-q/2) = -q^2/4-6  < 0

が成立する. したがって

 \displaystyle{\left\{
\begin{array}{l}
A \cap B = \emptyset\\
A \neq \emptyset \\
B \neq \emptyset\\
\end{array}\right.}

であることから,  x \in A x \in B であるための必要条件でも十分条件でもない.

また

 \forall x \in U [x \in B \Rightarrow x \notin A]

であるから,  x \in B x \in \overline A であるための十分条件であるが, 必要条件ではない (反例,  x = 1)
//