ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

パーソナル・ソング

数年前のサンダンス映画祭で話題となったドキュメンタリー映画『パーソナル・ソング』(Alive Inside, 2014)

でも紹介されていたが、認知症の症状の緩和に音楽が用いられている。それがどこまで効果があるのか寡聞にして知らないが、人にとって特定の音楽 (パーソナル・ソング) がその人の記憶を刺激して、過去の特定のイメージと結びつくことで、それを記憶の底から呼び覚ますことは、充分ありそうなことだと感じる。過去の歌を聞いて、自分に近しかった人がその歌をよく口ずさんでいたことを懐かしく思い出し、その親しかった人のことをあれこれ呼び起こすというのは、多くの人が経験することであろう。また、歌詞は覚えていなくても、メロディの 1 節ぐらいは覚えていることはザラであり、ということは、言葉よりもメロディは遥かに記憶に長く残りやすいのである。過去に聞いた音楽のメロディが記憶から取り出されるとき、それに関連した記憶も刺激され、一緒にそのときの感情や雰囲気や映像まで取り出されて、脳の働きが活性化するのだと思う。

セラピーを受ける相手の年代の音楽背景を充分理解した音楽療法士の方が、相手にとって記憶を喚起しやすい曲を選択し、さらに想起の手助けのため、あれこれ音楽に関連することについて説明されたり、質問されたりする内容の記録を読んでいる内に、学生時代の蓮實さんの映画ゼミを思い出した。蓮實さんは音楽療法士がされているような質問を学生へしていた。もちろん、学生はまだ若いので前頭葉は流石に老化していないはずだが、逆に記憶へのインプットが不足しているので、年 100 本以上サイレントを含む映画を見ることを学生に課していたし、記憶の喚起が抽象的で紋切り型のイメージに自動的に結びつくことに常に注意していたと思う。そういう意味では、誰でも知っていることを忘れたかのように振る舞うことを覚えるのも重要なのである。

さて、1937 年にビング・クロスビーが初めて歌った『ブルー・ハワイ』を聞く。

1937:
Bing Crosby:

1954:
Bing Crosby:

1957:
Patti Page:

1958:
Frank Sinatra:

Billy Vaughn Orchestra:

1961:
Elvis Presley

1967:
西郷輝彦:

※ 1936 年にディック・ミネは『ブルーハワイ』というタイトルの曲を歌っている。