ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

娘船頭さん

前回の記事の美空ひばりの歌の中に、『娘船頭さん』があって、それは正確には「潮来もの」であるが「マドロスもの」源流であると思って一緒にあげておいた。

1955:
娘船頭さん (美空ひばり):

歌もよいが、このクリップの映像は非常に素晴らしいモノクロ画面だなあと思った。この映画 『娘船頭さん』(1955) は見たことがなく調べたら、萩原徳三監督の第一回長編作品で、撮影は小津安二郎監督の名キャメラマンである厚田雄春とある! しかも 『東京物語』(1953) と『早春』(1956) の間の 1955 年という日本映画の絶頂期にあたる時期である。素晴らしくて当然であり、こちらの不明を恥じて改めて見たのだが、途中でインサートされる叙情溢れる逆光のショットは、まるで『東京物語』の連絡船の船着場の撮影を想起させる。萩原徳三監督は戦前から松竹の助監督をしていた人だと思う。脚本は小津作品も手がけている伏見晃である。この作品、厚田さんの撮影で、昭和 30 年頃の水郷の映像が見られるだけでも価値がありそうだし、DVD が出ているようなので、見てみよう (映画館で最近上映していたらしく、スクリーンで見られなくて残念)。

最後に「潮来もの」の流行歌は数多いが、ここでは二曲を追加であげておく。念のため、上田敏から芸名をとったという上原敏はニューギニア方面で戦死、早逝してしまったが (35 歳没)、戦前は東海林太郎と肩を並べていた歌手である。

1937:
娘船頭さん (上原敏):

1960:
潮来花嫁さん (花村菊江):

※ 潮来笠 (方宥心):


※ 同じ監督でも『ロッキー』(1976) よりは遥かに良いと思った『ベスト・キッド』(1984) で、ミヤギが歌う曲 『裏町人生』(1937) は、上原敏のヒット曲の一つである。


娘船頭さん [DVD]

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