雑記 (30)

前回の続きである。 R加群(アーベル群であることに注意)の短完全列を以下とする。

このとき、

(fは「分裂単射」である) \Leftrightarrow(gは「分裂全射」である)

が成立し、短完全列は「分裂(split)」 するという。

(証明)
まず  f が「分裂単射」であると仮定する。すると、準同型写像  s: M \to M^{\prime} が存在して、 s \circ f = id_{M^{\prime}} となり、前回の記事から、

 M = \mathrm{Im}\, f \oplus \mathrm{Ker}\, s = \mathrm{Ker}\, g \oplus \mathrm{Ker}\, s

となる。ここで、 M^{\prime\prime}への制限写像  g_1= g|_ {\mathrm{Ker}\, s} を考えると、

 g(M) = g( \mathrm{Ker}\, g \oplus \mathrm{Ker}\, s)= \mathrm{Im}\, g_1

 g全射なので、 g_1全射である。

また、 x \in \mathrm{Ker}\, s として、 g_1(x)=0 と仮定すると、
 g(x)=0 がいえ、  x \in \mathrm{Ker}\, g = \mathrm{Im}\, f である。したがって、 x = f(x^{\prime}), x^{\prime} \in M^{\prime} となる  x^{\prime} が存在するが、 s(x) = 0 なので、 s(x)=s(f(x^{\prime}))=x^{\prime} =0 ということがわかり、結局、 x=f(x^{\prime})=f(0) =0 となって、 g_1(x)=0 ならば、 x=0 であるから、 g_1 は、単射である。したがって g_1全単射から同型写像となり、このことから、  \mathrm{Ker}\, s  \simeq M^{\prime\prime} である。

以上から、  f が「分裂単射」であるならば、

 M = \mathrm{Im}\, f \oplus \mathrm{Ker}\, s \simeq M^{\prime} \oplus M^{\prime\prime}

となり、同型ならば g_1の逆射があり、 g\circ g_1^{-1}= id_{M^{\prime\prime}}なので、 g は「分裂全射」である。

逆に、 g が「分裂全射」であると仮定する。すると、準同型写像  t: M^{\prime\prime} \to M が存在して、 g \circ t = id_{M^{\prime\prime}} となり、前回の記事から、

 M = \mathrm{Ker}\, g \oplus \mathrm{Im }\, t =\mathrm{Im }\, f \oplus \mathrm{Im }\, t \simeq M^{\prime} \oplus M^{\prime\prime}

となる。射影 p: M \to M^{\prime} を考えると、 p\circ f = id_{M^{\prime}} であり、したがって、 g が「分裂全射」であるならば、 f は「分裂単射」である。//