雑記(32)

巡回群に関する前回の記事の補足。以下の基本的事実を証明なしに使った。

「任意の巡回群  Gの部分群 
H は常に巡回群である」

(証明)
巡回群  G の生成元を  a とする。 a=1 (単位元) のときは明らかに成立する。そこで  a\neq 1 の場合について証明する。

部分群 H単位元のみの集合の場合は明らかに成立する。そこで部分群 H単位元以外の要素  a^i を含むとする。

 H は群であるから  a^i を含んでいれば、必ずその逆元  a^{-i} も含んでいる。したがって  a の肩の指数で自然数 (正の整数)であるものを部分群  H の要素について集めたものは、空集合とはならない。一般に任意の空でない自然数の集合には最小の自然数が存在することから、いま考えている集合にも最小の自然数が存在し、それを  q とする。

このとき、 H = \langle a^q \rangle であることを示す。まず、 \langle a^q \rangle \subset H であることは明らかである。したがって逆が成立することを示す。

部分群  H の任意の要素を  a^m とする。 m q の組 (m,q) から割算の偉大な法則により、

 m = nq + r  \,(0 \leq r \lt q)

を満たす整数、 「商」  n と「余り」 r の組  (n,r) が一意的に定まる。

すると、

 a^{m} = a^{nq +r} =(a^{q})^{n}a^r

となることから、

 a^{r}=(a^{q})^{-n}a^{m}

となるが、右辺は群の公理から、部分群  H の要素であり、すると  a^rも部分群の要素である。これと、 r \lt qq が最小の自然数であるという条件から、 r = 0 が成立する。

以上より、

 a^{m} = a^{nq +0} = (a^q)^n \in \langle a^q \rangle

なので、 H \subset \langle a^q \rangle となり、

 (\langle a^q \rangle \subset H) かつ  (H \subset \langle a^q \rangle)

から、

 H = \langle a^q \rangle

である。//

これも前回の記事の補足だが、

 \mathrm{\# Gen}(C; G)
という記号を位数 nの群  G において、巡回部分群  C の生成元の要素数と定義する。

 G の任意の要素は巡回部分群を一つ生成するので、

 \sum_{C} \mathrm{\# Gen}(C; G) = n

は群  G がたとえ巡回群でなくても常に成立する。また一つの巡回群の生成元の数は、前の記事からオイラーの関数で与えられるので、

 \sum_{C} \mathrm{\# Gen}(C; G) = \sum_{C}\phi(\mathrm{ord}(C)) = n

は成立する。ここで、 \mathrm{ord}(C) は、巡回群  C の位数の意味である。

ところで、ここでは証明しないが、オイラーの関数ではよく知られた一般的に成立する美しい関係として、

 \sum_{d|n} \phi(d) = n

が存在している。前回の記事で示したように、群  G が位数 n巡回群で、任意の n の約数  d について、位数  d の巡回部分群が必ず「ただ一つ」存在するという条件があれば、

 \sum_{d|n} \mathrm{\# Gen}(C; G) =  \sum_{d|n} \phi(d) = n

が実際に成立する ( d|n n の約数の意味)。

ところで、今度は、群  G巡回群かどうかはわからないが、約数  d において、巡回部分群を高々一つ(つまり 0 または 1) 持つことだけが分かっているとする。そうすると

 \sum_{d|n} \mathrm{\# Gen}(C; G) \leq  \sum_{d|n} \phi(d) = n

だが、左辺の  \sum_{d|n}\mathrm{ \# Gen}(C; G) n なので、結局、巡回部分群を有しない (  0 の) 場合は許されず、

 \sum_{d|n} \mathrm{\# Gen}(C; G) = \sum_{d|n} \phi(d) = n

が成立する。そうすると特別な場合として、群  G 自体も巡回群であることが証明できてしまう。

したがって、前の記事の乗法群が巡回群であることの証明は、位数  d の巡回部分群が高々一つであることだけ示すだけで良かったのである。