雑記

コニー・フランシスが八ヶ国語でレコーディングした年 (1961 年) に、IBM 社のロルフ・ランダウアーは、 今では、“Landauer's Principle” として有名になった原理を主張した。

これは、計算過程で蓄えた情報をメモリーから消去(リセット)するような「非可逆的 (!)」な情報処理は、熱力学においても非可逆であり、環境の熱力学的エントロピーの上昇は、1 ビットあたり k_{B} \ln {
 2} (1 ナット、  k_{B} は分子 1 個あたりの気体定数であるボルツマン定数 )となり、したがって環境温度を  T とすれば排出される熱量は、最低でも  \delta Q = T\Delta S = k_{B}T \ln {2} となるというものである。

計算の論理状態数 (つまり情報エントロピー) が減少するならば、それを補償するように、熱力学的エントロピーが増加すると言っているのである。もちろん、情報の消去がない (あるいは使わない情報でもメモリーに残しておく)「可逆計算」ならば、原理的には、熱力学的に可逆な操作ができ、エントロピーの生成はなくせる。

有名な「マックスウェルの悪魔」的な話は、リチャード・ファインマンも『ファインマン物理学』で面白いブラウン運動をソースに一方向に駆動する (ただし温度差が必要) ラチェット (爪車) を紹介しているが、情報処理を融合させることで、不可逆を可逆サイクルにしてしまう思考実験としての「シラード・エンジン」に近いものが実際にデバイス化されるのも、そう遠くない先かもしれない。もちろん、その場合でも、情報処理に用いたデータを消去すれば (つまり情報エントロピーを下げれば) 先程のランダウアーの原理から物理エントロピーが増えるので、(第二種) 永久機関とはならない。