雑記(2)

前回の記事で、確率共鳴で低コントラストの識別率が上がる理由は二つの仮説が考えられる。

1) ノイズが増えることにより画像全体の平均輝度が下がることで、ヴェーバー・フェヒナーの法則により弁別閾が小さくなる。
2) 人間の視覚の非線形性により、刺激に対して閾値を持つが、閾値レベルに達していない信号にノイズが重畳されたことで閾値をこえ、またその近傍もあわせて発火する。ノイズが増えすぎると、信号でないグラウンド部分でも閾値を超えてしまうのが出てくるのでノイズは識別の阻害因子としてしか働かない。

2) は、視覚細胞の活動電位モデルとして 活性因子および抑制因子 (隠れ因子) を変数とする FitzHugh-Nagumo model を反応系として考え、刺激によって生成される活性因子の周辺視覚細胞への拡散よりも、同時に生成される抑制因子の拡散の方が十分に抵抗が少ない (= 拡散係数が大きい) とする有名なアラン・チューリングのパターン形成する条件下での反応拡散モデルを作って、そこに微弱な信号とノイズを加えればシミュレーションできるだろう。

ところで、今ではバイオミメティックス(生体模倣技術)やバイオミミクリー(生体応用技術)と呼ばれる人間から謙虚に学び、それを新たなイノベーションのヒントにして行こうという考え方を実践しておられた南雲仁一さんの名前が入っている FitzHugh-Nagumo 方程式は、もともとは、ファン・デル・ポール (これ全体がファミリー・ネームで、名前はバルタザールである) が、1920 年代に数々の名品のタマ (真空管) を生み出したオランダのフィリップ社の基礎研究所で、三極管による発振回路 (トランスを用いた相互誘導帰還型) を研究したときに使った van del pol 方程式がベースになっている。1926 年に “On Relaxation-Oscillations” として論文発表されている。その方程式は、

 \ddot{x}-\varepsilon(1 - x^{2})\dot{x}+ x = 0

の形である。こちらの式は簡単なので解説すると、第 2 項がなく

 \ddot{x} + x = 0

だと普通の慣性力と復元力がフローとして保存されている調和振動子の方程式に過ぎない。問題は二番目の項のパワーが外部と出入りする部分である。 |x| \lt 1であればパワーが系に流入 |x| \gt1 であればパワーが外へ散逸する形になっている。

真空管の電流特性を

 g(v) = \varepsilon( - v + \frac{1}{3}v^{3})

 g(v) = - g(-v) という対称性が仮定されているため、2 次の項はない。

とおいてキルヒホッフの法則 (第1法則 = 電流の連続) から、コイル L の電流 iキャパシタ C の電流  C\cdot\dot{v} として、簡単のために C = L = 1 とすると

 \dot{v} + g(v) + i = 0

で、これをさらに時間  t微分して

 \ddot{v}+ \frac{dg(v)}{dv}\dot{v} + v = 0

とすれば、

 \ddot{v}-\varepsilon(1 - v^{2})\dot{v}+ v = 0

が得られる。