ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

綴りと発音

すでに紹介した Ella Fitzgerald の “Bewitched, Bothered, Bewildered” は 20 世紀が残した美しい名唱だと個人的に思っている。

当然であるが、この曲だけでなく、英語の歌はライムに注目して聞く習慣をつける必要がある。詩や歌に限らず、ライムというのは、英語には本質的な意味があると思う。

以前、ヒッチコックの英国時代の映画をDVDで見ていたら、Mae West を 「マエ・ウェスト」と字幕に訳していて唖然としたことがあったがたとえ メイ・ウェストという女優を知らないとしても、「マエ」と読むのは、日本人ぐらいではなかろうかと感じたことがある。要は英語には存在しないローマ字読み (あるいはモーラ読み、CV読み) の体系にまず当てはめようとするのである。それはリスニングでも同じ事だと思う。母音の発音は、後の子音の並びや、語末の e などによって決まるファクターが多いなんてことは頭で分かっていてもそうしてしまうのである。

英語の単語の綴りと発音の関係があれほど一致しないのに、英語圏の子供たちは、どうやって新しい単語の綴りと発音の関係を覚えていくのであろうか?綴りと発音が一致しないなんてことがない日本語で育ったものとしては、非常に興味があるのであるが、本当のところはよくわからない。一般によく言われるのは、たとえば “oo” には、“short oo” の発音と、“long oo” の2種類の発音があるとかいうフォニックスの知識を教えられることだが、それだけなのだろうか。フォニックスの知識だけでは例外が多すぎて、新しい単語を正しい発音で読むことは難しいと思うからだ。

Nursery Rhymes なんかを聞くと子供達は音節のライムに注目するということは確実にあると思う。

One, Two. Buckle my shoe
Three, Four. Open the door
Five, Six. Pick up sticks
Seven, Eight. Lay them straight
Nine, Ten. Do it again! 

子供達は、CVに注目してローマ字読みすると、発音が一定性にかけ、多くの日本人がそうであるように音読する正確さに欠けることを自然に見出すのであろう。結局、英語の母音をどう発音するかは、母音文字単独で決まるということはありえず、音節のライムというグループの中で考えないと一定性が見出せないからである。

例えば、

child
wild

の語末のライム部分 “ild” の読みは、常に一定である。しかし、これとても

kind
wind

のライム部分 “ind” では、母音の読みが異なるので個別に覚えないといけないのが英語の困ったところだが、このような異なる発音の要求はライム・レベルでは絞られてくることも事実である。子供たちはフォニックスの知識とライム部分の一定性に着目し、この二つのルールを組み合わせて知らない単語の発音を徐々に記憶していっているという仮説は考えられる。いずれにしても CVC では、リスニングの際には C+VC の感覚であり、V は最後の C とより強く結合する。