ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

Speak Low

この曲は、1928 年にベルトルト・ブレヒトの『三文オペラ』の音楽を監修し、その後米国に亡命したユダヤ系音楽家 Kurt Weill の代表曲の一つである。“Speak Low” という言葉は、数年前まで放送されていた某TV番組と関係があるとはにわかには信じたくないシェークスピアの『恋のから騒ぎ (Much Ado About Nothing)』 の中にある

Speak low if you speak love.

が出典である。ともかく米国のポピュラー音楽は懐が深いのである。

歌詞は以下の通りで、いいかげんでまったくセンスのない訳もつけておくことにする。

Speak low when you speak, love
囁いて、愛を語るなら

Our summer day withers away too soon, too soon
夏の日は色褪せる、あまりにも早く

Speak low when you speak, love
囁いて、愛を語るなら

Our moment is swift, like ships adrift, we’re swept apart, too soon
時の流れは速いわ。すぐに別々に流される、
漂う船のように

Speak low when you speak, love
囁いて、愛を語るなら

Love is spark, lost in the dark too soon, too soon
愛は一瞬の火花、闇にすぐに吸い込まれてしまう

I feel wherever I go that tomorrow is near, tomorrow is here and always too soon
どこへ行こうと、明日は近く、明日はここ、いつもすぐって感じる

(*)
Time is so old and love so brief
時間はとても長いけど、愛はとても短い

Love is pure gold and time a thieif
愛は純金で、時間はそれを奪うもの

We’re late, darling, we’re late
ねえ、遅れちゃうわ、遅れちゃうのよ

The curtain descends, everything ends too soon, too soon
幕が下りるとすべてが終わるのよ、すぐに!

I  wait, darling, I wait
ねえ、じっと待っているから、

Will you speak low to me, speak love to me and soon
囁いて頂戴、愛の言葉を、すぐに

(Repeat *)

1943:
Mary Martin and Kenny Baker:
※ この曲は、1943 年のブロードウェイ・ミュージカル “One Touch of Venus” からのものである。

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1944:
Billy Reach w/ Guy Lombardo and his Royal Canadians:

Judy Garland:

1948:
Eileen Wilson and Dick Haymes 
※ 1943 年の ミュージカル “One Touch of Venus” は、1948 年に映画化され、まだ 20 代の美しい Ava Gardner が主演する。ただし歌は Eileen Wilson が吹き替えている。Dick Haymes はこのブログですでに紹介済み。この時期、シナトラを凌ぐ人気があった。ところで、このクリップでガードナーの相手役は Robert Walker で、アルフレッド・ヒッチコックの『見知らぬ乗客』(Straners on a Train, 1951) でサイコパシーを演じていた人である。

1952:
Anita O’Day:

1953:
Chet Baker and Gerry Mulligan:

1956:
Billie Holiday 
※ 1. Holiday & Her Orchestra: Harry ‘Sweets’ Edison (tp), Ben Webster (ts), Jimmy Rowles (p), Barney Kessel (g), Joe Mondragon (b), Alvin Stoller (d)
※  2. Billy Holiday が Kurt Weill の曲で他に歌っているのは “September Song”ぐらいしか思いつかない。Weill はちょうど 1900 年生まれで1935 年に米国のニューヨークに亡命して、1950 年に亡くなるまでは、ニューヨーク(ブロードウェイ)とロサンゼルス(ハリウッド)を行き来していた。Weill は、Billie Holiday の同時代人であり、両者が遭遇していたとしてもおかしくはない。

Ray Conniff:

1957:
John Coltrane:
※ Donald Byrd (tp), Curtis Fuller (tb), John Coltrane (ts), Sonny Clark (p), Paul Chambers (b) and Art Taylor (d)

1958:
Lotte Lenya:
※ Kurt Weill と 「2 回」結婚した Lotte Lenya は、映画にも何本か出演している。といっても見たことがあるのは、かなり年齢がいってから出演したテレンス・ヤング監督の『007 ロシアより愛をこめて』(007 From Russia With Love, 1963) だけである。YouTube を探したらあるんではないかと思う。たしか Lenya はスペクターで、ホテルの部屋かどこかで、撃たれて殺されてしまう役だった。二人が生前にやり取りした書簡がまとめられて本になっているが、そのタイトルは、“Speak Low (When You Speak Love)” になっている。この手紙には当時のハリウッド映画人のことがたくさん書かれているので古本を買ったんだが (絶版)、未だに読んでいない。

Jo Stafford w/ Paul Weston and his Orchestra:

Sarah Vaughan:

1959:
Lena Horne:

1960:
Anita O’Day:

 

Speak Low (When You Speak Love): The Letters of Kurt Weil and Lotte Lenya

Speak Low (When You Speak Love): The Letters of Kurt Weil and Lotte Lenya

  • 作者: Kurt Weill,Lotte Lenya,Kim H. Kowalke,Lys Symonette
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