ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

トップ・ハット (1935)

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マーク・サンドリッチが監督したアステア=ロジャース映画の五作品すべてが、デヴィド・エイベル (David Abel) のキャメラであるという事実は、ある時期以降の小津作品のキャメラがすべて厚田雄春であったという事実ほどの重要性はないにせよ、ハリウッド映画のスタジオ・システムにおいてかなり特異なことと言えるだろう。同じアステア=ロジャース映画でも監督がマーク・サンドリッチでなければ、デヴィッド・エイベルは撮影に関わっていないのだ。

 上の “Isn’t This a Lovely Day?” のクリップを見てもわかるように各ショットの長さのバラツキは大きい。これは、ヴィンセント・ミネリ監督の『バンド・ワゴン』(The Band Wagon, 1953) の “Dancing in the Dark” のシーンと較べてみればわかるだろう。

またサンドリッチの映画では、フレッド・アステアを女性 (ジンジャー・ロジャース) の後ろに配置させることがきわめて多い。アステアが歌っているときには、ロジャースが表情で演技しているのに注目させる工夫だと思うし、舞台出身のアステアは芝居がやや大げさということもあるのだろう。実際、女優にはアップがあるがアステアにはない。アステアの方の役柄は最初から最後まで一貫して女性を追いかけているだけなので、基本的に心境の変化などはなく重要なのは、ロジャースの方の心境の変化なのである。

 

トップ・ハット ニューマスター版 DVD

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