インドから遠く離れて

帰国した。行きに成田空港の書店で搭乗までの時間潰しをしていたら、「藤本隆宏」の名前があったので、もしかして面白いのではという期待で『現場から見上げる企業戦略論』というタイトルのついた新書を買って飛行機の中で読んだ。テレビを見たり、日本の新聞、週刊誌、新書類の読書をする習慣は、時間を無駄にするのがあまりにも馬鹿らしくすっかりやめてしまって久しいが、この新書は最低限の水準に達していて、それなりにフィクションとして楽しめた。

 

帰りは文庫化された際に細部の修正があった『監督 小津安二郎 [増補決定版] 』を改めて通読した。もちろん、この本の内容は、1981年のフィルムセンターの小津作品の特集上映の際のパンフレットに掲載された当時から親しんできたものだが、時間があれば、もう一度読んでおこうと思っていたのである。

 

文庫本の帯には「日本映画批評の金字塔」なんてあるが、なんかよくわからない惹句である。というのも、行きに読んだ藤本隆宏の著作ですら分野こそ全く違え、いまやこの本の影響下にあるではないかと思っているので、全然惹句になっていないのではと感じてしまったからである。複製技術の時代には、それが記憶を持つことによって、時間的、空間的に差異を含みながら動的に網の目のように拡がり出している総体を現場において捉える眼を鍛えることこそが重要なのであって、単体だけを空間から切り出して見たり、歴史を無視したり、抽象的に見たりすることはもはや「生産的」ではないということを実践して「歴史的転換を引き起こした書物」だと思う。まあ、現在はその認識の転換への途中段階なので、それに気づいていない鈍感な人が未だに多いのは映画という特定の分野ですらそうだから無理はないと思うけど。

 

音楽はインドということで、川内康範の『行けレインボーマン』でも取り上げて、「総体」として捉えるために『月光仮面』『七色仮面』にでも触れようと思ったが、その暴挙は寸前で思いとどまって、向こう(インド)で何故か不図、メロディーが出てきてしまった次の曲を紹介する。