昭和三十年代前半の算数指導についての本を読んでいたら「文章題」——昭和 29 年頃からある言葉らしい——に子どもがどのようにつまずくのかが具体的な経験をもとに書かれていて、なおかつ例示も豊富で読み物としてもとても面白いものだった。他にも面白い部分…
字を読めるようになった頃、家に置いてあった本の一部は教えられた通りに読もうと思っても正しく読めないのが不思議だった。その最も初期の体験がこの『魔法の杖』という本を開いたときであろう。ときどき、改めて読んでみたいと思っていたが、昭和二十一年 …
ジョン・フォードの映画の「太い木の幹の誘惑」のように蓮實さんの文章の中に植物が出てくることはもちろん少なくはないが、植物名(﹅)が文章に具体的に出てくることは少ないなあと思っていた。例外は古井由吉の『白髪の唄』を評した「榎」ぐらいしか思いあ…
ま金(かね)吹く丹生(にふ)のま朱(そほ)の色に出(で)て言はなくのみぞ我(あ)が戀ふらくは (3560)金を精錬する丹生の赤い辰砂のように、はっきり表に出して言わないだけだ、わたしの恋は。※ ま金ふく丹生のま朱: 丹生は地名。ま朱は辰砂 (もともとは「丹」とい…
今は我(あ)は死なむよ我(わ)が背(せ)戀すれば一夜一日(ひとよひとひ)も安けくもなし (2936)もうこの身も儚くなるほどです、我が背。お慕いするあまり、一日一夜とて心安らかなことはありません。 我(わ)が命し長く欲しけく僞(いつは)りをよくする人を捕ふば…
愛(うるは)しと思へりけらしな忘れと結びし紐の解くらく思へば (2558)あの方はわたくしのことをいとしく思っておいでになるらしい。「忘れないでください」と結んで下さったこの紐が自然に解けることを思うと。※ 下紐が解けるのは相手が思ってくれているしる…
相思はずあるらむ子ゆゑ玉の緖の長き春日を思ひ暮らさく (1936)少しも思ってくれそうにない女のために、(玉の緒の) 長い春の日を思い暮らすことである。 かくばかり雨の降らくにほととぎす卯(う)の花山になほか鳴くらむ (1963)こんなに雨が降っているのに、…
潮滿てば入りぬる磯の草なれや見らくすくなく戀ふらくの多き (1394)潮が満ちてくると海の中に没してしまうあの磯の海藻のようなものであろうか、自分の思う人は目に見ることは少くて恋い焦がれてばかりいる。 我(わ)が背子をいづち行かめとさき竹のそがひに…
栲縄(たくなは)の長き命を欲りしくは絶えずて人を見まく欲りこそ (704)(栲縄の) 長く生きられる命をわたくしが望んでまいりましたのは絶えずあのお方とお逢いしたい一心からなのです。 むらきもの心碎(くだ)けてかくばかり我(あ)が戀ふらくを知らずかあるら…
「ク語法」が気に入っていて萬葉集の中でその語法が使われている短歌だけを適当にあげてみる気になった。み吉野の山のあらしの寒けくにはたや今夜(こよひ)も我(あ)がひとり寢む (74)み吉野の山颪が寒いのにひょっとして今夜もわたしはひとりで寝るのだろうか…
わけあって、『おくのほそ道』を読みなおした。そのときに、下にある引用中の「折(をり)〳〵にの給ひ聞え給ふを」の部分を「機会ある度に言葉をかけて下さり私にお聞かせになるので」と読んだのだが、これで良いかどうかは分からない。ただし、同じ『おくの…
現代国語の問題——年度は不明だが「共通一次 (大学共通第一次学力試験)」で出題されたらしい——に芥川龍之介の『秋』が抜粋されていた。取り上げられているのは以下の部分で、問題文の最初に次のような説明がある。「次の文章は、芥川龍之介の小説『秋』の一節…
中学 年生に座標軸とはすでに正負の数のところで習った数直線を 本, 横と縦に配置したものだと説明していたら *1, なぜか望月新一先生のブログ記事を思い出してしまった. 「同じものを同じものと見做すか, それとも違うものと見做すか」という話は, 恐らく…
前回の続きだが, 中学数学からはちょっと逸脱する.集合 から 集合 への関数 があって, その要素 の順番を反転した対 の集合が集合 から 集合 への関数になる条件を調べるには, 前回の記事で取り上げた関数の定義を素直に確認すればよい. まず, 任意の につい…
なんとなくしか覚えていないが, 数学教育の現代化がいわれていた時代だから, 中学 年の数学の教科書にある「関数」の定義は「 つの集合 , があって, のどの要素 に対しても, の要素 がただ つだけ対応するとき, その対応を から への関数という. またこのと…
大谷翔平の打率 を 割 厘 というのは, 打あたり安打が 打と考えるのが自然だからだろう.同じように百分率で表された割合は, 単位あたりで考える方が自然な気がする. たとえば, の食塩水は, あたり食塩が 含まれていると考えた方が自分にはとっつきやすい. こ…
文章題を読んで 1 次方程式をうまく立てられない場面にしばしば出くわすのは一体なんなんだろう. 最近仮説として思っているのは, 小学校 5 年生で習うことになっている「単位量 *1 あたりの大きさ」あたりがよく理解できていないこともひとつあるのではない…
「ちくま」に隔月連載されている蓮實重彥の「マイナンバー・カード」についての文章を読んでいるときに, なぜか唐突に思ったのは, 英語圏では,の左辺の “−” は minus と読み, 右辺の “−” は negative と読むのが, こと数学に関しては普通だということであり,…
日本に居て合衆国を生々しく感じた最近の出来事といえば、大谷翔平選手が自チームのベンチでひまわりの種らしきものをもぐもぐと噛みながら、その殻を片手に持った紙コップへ吐き出している光景をテレビで見かけたことくらいしか記憶がない。ハリー・ベラフ…
YouTube にプレストン・スタージェスの『結婚五年目』(The Palm Beach Story, 1942) をデジタル修復したものがあったので、ちょっとだけ見てみようと思ったら、二回続けて見てしまった。ルディ・ヴァリー (Rudy Vallée) が演じる大富豪がなぜかフロリダ行き…
前回紹介した Dr. Geoff Lindsey の動画が興味深かったのは, 自分が浴びるほど見てきた黄金時代のハリウッド映画の中のTransatlantic English について関心を向けてくれたせいもある. 他の動画も見てみたが, 前の動画ほどではないものの, 英語教材としては群…
最近見た動画で, これが一番面白い. 「母音連続 (hiatus) 回避」を基本に整理すると, 英語の母音体系が簡単になるという話で, 内容は British English についてだが, とても役に立つなあ. もちろん動く音 (glide) である /j/, /w/ ぐらいは理解している必要…
YouTube をみていたら, Frank Muller による “The Great Gatsby” の朗読があった. 他の何よりもこの朗読が自分に英語を教えてくれた. 一体何回聴いただろう, いまでもたまに聴くことがある. Frank Muller はバイク事故が原因ですでにお亡くなりになったそう…
小学生に「割合」とか「食塩水の濃度」とか「速さ」を教えていて, 噂に違わず習得に困難さがあるのだなあと感じた (だからといって「はじき (みはじ)」だの「くもわ」だのを教えるつもりは全くない). そもそも, 「長さ」と 「時間」のような異なる量同士を足…
近所をぶらぶらするいつもの散歩でも春は楽しい。ミスミソウの花が可憐であった。近くにカタクリの花も咲いていたし、ヒメウズの花も咲いていた。ヒメウズも可憐な花だとは思うが、ほっそりとした茎についた花はあまりにも小さく、おまけに下を向いているの…
中1 の数学の最初は正負の数の計算の勉強から始まるのだが, いつも変なことを教えている気分がしてしまう.たとえば, 割り算 (除法と呼ぶようになる) は逆数をとって掛け算 (乗法) にしてから計算すると教えるのだが, だったら引き算 (減法) の方も足し算 (加…
与えられた複雑な条件よりもより簡単な同値条件を求めるという問題は数学では非常に多くあるが, 最初に理解しておかないといけないのは, 一般的に「すべての」とか「存在する」とかの修飾を受け量化された変数 (束縛変数) は消去され, 自由変数のみの同値条…
今度、小学生に分数の割り算について聞かれたら、次のように説明してみよう。
蛇紋岩を拾って暫し見つめていた.地球のマントル上部を主に構成するといわれる美しい緑色をした橄欖(かんらん)岩は非常に不安定で, 地表になにかの拍子で上がってくる過程で水に触れると化学的に変質してしまい, 名称からしてなにやら禍々しい蛇紋岩と呼ばれ…
数学の問題はこれ以上記事にするようなものはないので, 理科の問題を見た. 理科の問題はやさしいので, 油断して (あるいは長い問題文にウンザリして) 問題をよく読まないで解答をしさえしなければ完答できると思う. 馬鹿らしくなって雑になってしまうような…