ノリの悪い日記

古今東西の映画、ポピュラー音楽、その他をいまここに交錯させながら随想します。

春蘭

散歩していたら春蘭が咲いていた。 少し前まで雑木林に普通に自生して見られた春蘭は地味だがよく見ると気品のあるところが (過去の) 日本人の感性にあうのか昔から愛されており、自生しているものを掘って庭に植えたり、鉢植えにして楽しんだという記述も少…

瞳をとじて

最近、映画健忘症にかかった感のある自分は遅まきながらこの映画を見て、まるで登場人物のフリオがしただろう体験をしたのだった。やはり映画館こそ失われた記憶を取り戻すのに一番適した環境なのかもしれない。 少なくともこの作品の登場人物たちはそのこと…

大阪大学入試問題 (2024 年, 数学)

すでに話題になっているようだが, 大阪大学の 2024 年数学の文理共通問題に立体幾何の証明問題が出題されている. これは面白そうだと思ってやってみた. 制限時間もあるので, どこまで詳しく証明を書けばよいのかわからないが, 立体幾何のよく知られた基本命…

『駅馬車』の広告

戦前 (1940 年) の映画雑誌の広告を見ていたら『駅馬車』の広告に小津安二郎 (旧字だから, 小津安二郞である) と溝口健二のコメントがある。これが淀川長治さんが当時在籍していた日本ユナイテッド・アーチスツで作られた宣伝なのか。

プリズム

神奈川県公立高校入試, 理科の問題は最初にプリズムの問題だった.プリズムに関しては, 下の図からわかるようにという関係がある. はもちろん定数で, 「三角柱」 が「正三角柱」なら である.高校入試では定番の太陽光発電パネルの問題も出ていたが, これも発…

神奈川県公立高校入試 2024 数学から

例年より小問がひとつ減った.【解】 (ア) 同じような問題を中 1 の定期テスト対策でやったばかりである. 直線と平面の垂直を理解していることと, ピタゴラス (三平方) の定理の基本問題である. 暗算できるだろう. 答えは 2 番.(イ) 展開図を描き直すときにわ…

上野昻志さん

前の記事で白土三平の『忍者武芸帳』のことを書いた後、偶然にも上野昻志さんが 2020 年に書いた『「読解力」を巡る一考察』なる文章をネットで見つけて、それを読んでいたら『忍者武芸帳』 のことが出てきた。上野さんの文章は中公新書の『教養主義の没落』…

数列の問題

小さいときに見たテレビ番組を大人になって再び見て郷愁を感じることはあっても, 作品として面白いと思うことはない. しかし, 白土三平『サスケ』のテレビアニメーションは唯一の例外である. これとても傑作というほどではないが, 1960 年代の子供向けテレビ…

クロモジ

部屋の加湿を忘れて寝てしまい、翌朝喉の調子が良くなかったので、普段は舐めることなどない飴でも試してみようと思いたち、近所のドラッグストアを物色していたら、「クロモジ」という名前が向こうから勝手にやってきて目に入ったので、迷うことなく「養命…

2024 年共通テストから

2024 年の数 IIB の数列の問題は小問の (1), (2) はともかく, (3) の最後の小問 (iv) だけはちょっと面白い. 存在命題だから, 実際に命題を真にする数列 がひとつでも存在すればよい. また存在命題を証明するには命題を真にする具体例をひとつあげればよい (…

PIE

包除原理 を使う入試問題を探していたら, 2023 年の東大の文理共通問題があったのでやってみる. この問題の問 (2) まで解くつもりなら, 問 (1) を (2) につながるようにどう解くかということが大事になる. もちろん問 (2) を捨てる場合にはこの限りではなく,…

共通テストから (3)

「モンモール (Montmort) のめぐりあいの問題」, もっと一般的には「包除原理 (The Principle of Inclusion and Exclusion; PIE)」——高校でも簡単な場合を習うが, シルヴェスター (Sylvester) は形式論理の定理として証明した*1 ——の応用なのだが, ここでは…

共通テストから(2)

数 1A の共通テスト問題 (2022 年) の整数解の問題は, 素直に誘導に乗る場合の解を記載していなかったので, ここに一応あげておく. (他の大問も皆そうだが, 小問に順番に答えてゆく過程での「単線的」ともいえる反復構造がこの年の共通テストの大きな特徴で…

共通テストから

数 1A の共通テスト問題 (2022 年) は整数解の問題はやった記憶はあるが, 他の問題もやったので一部をあげておく.(1) , のとき , , のとき (2) とおき, , のただひとつの共通実解を とするならば, を満たす. のとき, (多項式として等しい) となり, 重解も持…

飯沢匡

最近、飯沢匡(ただす)の文章を読んでいて、「ヤンボウ・ニンボウ・トンボウ」の作詞 (作曲は服部正) と「ブー・フー・ウー」の作詞 (作曲は小森昭宏) はともに飯沢匡ということにいまさらながら気がついた (“Rule of Three” といってしまえばそれまでだけれ…

集合の内包的表記

自分が高校生だった頃になく, 今はあることで羨ましいと思う数少ない数学の参考書は, 長岡亮介著『総合的研究 論理学で学ぶ数学――思考ツールとしてのロジック』 (2017) であるが, その後書きにこんなことが書いてある.蛇足に過ぎないんだが, 集合を表わすの…

全称命題と存在命題

全称命題と存在命題の扱いに慣れるために, 以前解いた問題を見直してみる. ※ 2 つ前の記事 「便利な(?) 論理演算」からの続きである.【問】 は定数とする. つの不等式, を同時に満たす整数 が存在し, かつそれが自然数のみになるとき, の値の範囲を求めよ.【…

涙腺が緩む

読んでいるのに、まるでホークスのスクリューボールの一場面を見ているかのような味わい。自筆の年譜の昭和二十七年 (十六歳) のところに、「(注: ジェラール・フィリップと) 同じエレベーターに、東和商事社長とその令嬢が乗っていて、胸もとに『陽気なドン…

便利な (?) 論理演算

自分だけそう思っているにすぎないかも知れないけれど, 便利だと思っている論理演算について書いてみる. なお, ここでは恒真命題は , 恒偽命題は で表わすことにする.まず, 単項命題 , の書き換えとして,これは, が前提を必要とせず, 成り立つことを示してい…

場合分け

ここでは, 線型代数の知識を用いることなしに, 直線 が平行となる条件を求めてみる.上の つの方程式が直線を表わす条件は,※ 中括弧 は 「かつ」を意味する.ここで,だから, 次のように場合分けすると, すべての場合を排他的に場合分けできる.※ 縦線 は 「また…

不等式の整数解

いつの頃からこの種の問題を扱うようになったか知らないが, 数 の不等式のところで, 整数解を何個持つ云々という類いの問題があるのだが, そこに挙げられている解法については唖然とした. こんな風に解かないといけないものなのだろうか. 自分にはとても真似…

2次方程式の解の配置

前の記事の続き. 今度はグラフを移動しないやり方で, いままでの解法を整理しておく. 下の二つの問題が解ければ, 他の問題もさして難しくないだろう.【問】 次方程式 の異なる実数解のうち, ただ つが, の範囲にあるような定数 の範囲を求めよ.【解】 問題で…

グラフの移動の応用

前回の記事で, グラフの移動について書いたので, 前にも解いた 次方程式の解の存在範囲の問題をもっと簡単に (?) 解いてみよう. 数 II では, 数 I のグラフを利用した解法を「解と係数の関係」「判別式」と対応づけてその同値を理解する単元がある.【問】 方…

グラフの移動

グラフの移動の話も前に書いたんだが, その後, もう少しマシな説明を思いついたので, 下の図を使ってしてみよう. この図はグラフの平行移動に関して, (それほど熱心ではないが調べた範囲では) 唯一感銘を受けた田島一郎さんによる説明で使用されていたものを…

一般角での証明

三角関数の初等的説明で, ときどき気持ち悪いのは, 「それって一般角で本当に成り立つの?」と思ってしまう疑問に答えてくれないことだ. 別に証明が大変というわけではない. たとえば, の場合, 加法定理で証明すればよいではないかと思うかもしれないが, そも…

三角関数の還元公式

三角関数の余角や補角の還元公式は上の図のようにグラフから判断するやり方 *1が一番直感的だし, 簡単だし, 早いと思うが, 微分や積分を使っても導ける. この方法だとほぼ瞬間的にわかるものもあるし, 時間がかかるものもある. (複素数で, , , をかけるより…

和差算と三角関数の公式

この記事は, 前にも書いたことがある内容をただ言いかえているだけである.前田隆一の『新算数教育講座』第 3 巻 (1960) については, 最近の記事で紹介したが, 文章題に「観点変更」をもたらす数理的主題のひとつとして前田は「量を分けること」もあげている.…

応用

前の記事の続き. 算数の文章題って, 答えを書くと文章が長くなってしまうんだが, 下のように書くと少しは見通しがよい気がする. 【問】A さんと B さんの所持金の比は 4 : 1 でしたが,2 人とも 600 円のおこづかいをもらって 2 人の所持金の比が 3 : 1 にな…

倍概念から分数へ

前の記事からの続きだが, 文章題の話ではないのでタイトルを改めた. 倍概念 (「量」に対する数の倍作用と言うべきものである) を使って分数を説明することもできる. 以下はその概略である.1) 単位分数n は (0 でない) 整数とする. 量 A が量 B の n 倍と同じ…

文章題にどのように躓くのか (2)

昭和 16 年に発行された國民學校初等科 (1・2年生) 向けの算數 (「算術」に代わって「算数」が初めて用いられた) 敎科書 『カズノホン』を少しだけ読んだ。図形教材に特徴があるといわれる 『カズノホン』だが、下にあげたのはそこではない。絵をまずみて文…